薄い
陸場に前脚をかけ、水中でほぼ垂直に立ってこちらを見つめている「まりりん(実名)」さん。連日、水槽の硝子越しに動いている相手に手を振るという行動から、本当は雄なんじゃないか、といわれ始めている彼女。もしそうなら、名前は「まりお(実名)」になるのか、という話も出ておりますが、館長専決により「まりりん(実名)」のままで行くことに決定しております。
実際彼女(?)は施設のアイドルでして、来館する子どもたちはもちろんのこと、施設の職員達にもとっても愛されております。溝掃除の最中に「ゴトン」と音がしたので石だと思われ、投げ捨てられそうになった彼女(?)ですが、すっかり水槽にも慣れ、最近は館長に咽を撫で撫でされても平気な顔でくつろいでくれるようになりました。
縁あって手に入れた1本。これに関しては、ほとんど実物を見たり書いたりした人がおらず、その割には雑誌に付録としてついてきた小さな中華萬がやたらと話題になったという、実にけったいな萬年筆です。何だかんだ言っても黄色いPILOT742でしょ、って、それを言っちゃぁおしまいよ、という世界ですね。
以前、職場に新任でやってきた国語の教員に、こういう萬年筆がある、という話をしていたとき、当然ながら梶井基次郎とか京都丸善なんかも話の中に出てくるわけですが、この先生、京都で学生時代を過ごし、下鴨神社で結婚式を挙げたという京都好き。挙げ句の果てに、じゃんけn大会でゲットした、師匠が実験で使ったプレッピー30本、なんてものを「書写の授業で使いたいから貸してください!」なんていうヘンタイさんに育ってしまいました。私の責任ではない、と思いたいところです。
で、その職場をあとにするとき、選別としてその先生がくださったのがこちらのインク。まぁ、国語の先生でも梶井基次郎知らない人は一杯いますし、そんな話を数学の先生(本当は社会と技術の先生)がしたので印象に残っていたのかもしれません。
これをいただいたのは3年ほど前のこと、ちょうどコロナで3ヶ月ほど全国の学校がお休みになっていた時期です。その頃すでにインクブームが始まっていたので、相当に難儀して手に入れてくださったのだそうです。3月にお別れしたのに、これをいただいたのは初夏の頃でした。
個人的には、やはりペン先に檸檬の絵が刻印された140周年の方が、サイズも大きくて好みなのですが、この742のサイズというのも結構手に馴染むものだと改めて思ったことでした。それにしても、もともと本数が少なく、なおかつ自身を模したミニチュアに話題をかっさらわれてしまったこのペン、偉大なものと走りつつも、何となく影が薄い感じがいたします。これに黄色いインクを入れて字を書くと、筆跡も薄い。同じく影の薄いもの同士、仲良くやっていきたいと思うのであります。
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