化けの革
もう、酔い潰れて寝ているオッサンとしか言いようのない「ちち(仮名)」さん。若い頃からその片鱗はありましたけれど、昨今はひときわその感が強くなって参りました。ワンコの寝姿というものはカワイイものですけれど、これはただのオッサンに過ぎません。
この子は小さな頃、ケージの柵に前脚をかけて立ち上がり、何度もジャンプをしてから排泄をする、という癖がありました。クセと言うより、そのようにしなければ排泄できなかったのだろうと思います。歳をとった今、お散歩に連れだしても排泄をすることなく家に帰ってきて、毛並みを整えるブラッシングの刺激で排便、なんてことがちょくちょくあります。ワンコも歳をとると、赤ちゃん返りするものなのでしょうか。
その昔、まだ妻と一緒に毎週神戸に遊びに通っていた頃に手に入れた1本。妻のものなのですが、何故か私が革巻きをする実験台になってしまいました。その当時、ル・ボナーで扱い始めたばかりの素材であった黒桟革という革を提供していただいて、あろうことか私自身が革巻きに挑戦したという、歴史的な1本なのです。
キャップも胴軸も白い萬年筆。白いのは綺麗、という理由で妻が買ったものですが、いかんせん鉄ペン。その当時は、WAGNERの会合でも、師匠は鉄ペンの調整をしてくださらなかったのです。インク止めとかアイドロッパーとかは萬年筆と認めん、鉄ペンは調整しない、なんて尖ったことをおっしゃっていた時代なのですが、現在は萬年筆趣味の裾野を広げるべく、いろんな分野に手を広げていただいています。この萬年筆も、購入したお店で調整して貰ったものですので、筆記角度その他は妻に合わせたものになっています。
クリップとペン先には、PLAYBOYのウサギさんの刻印があります。鉄ペンではあっても、これ自体しっかりとしたコンセプトで造られたペンなので、そのままの状態で保存してあったならばそれなりに価値が出ていたのかもしれません。胴軸やキャップに両面テープで革を貼っていって重なったところをカッターナイフで切る、という方法ですので、今、この革を剥がすと、カッターナイフで掘られた溝が残っているはずです。ですので、これはこの先もずっと革を巻いた状態で使い続けていくしかないのです。
日本で三番目に不器用な私がやりましたので、仕上がりもそれなり。苦労して合わせたはずの継ぎ目も、時間がたつとこの通りめくれ上がってきています。いかにも、「貼りましたよ」という仕上がり。プラチナ・シープは職人がいないという理由で廃盤になったそうですが、このような寸胴な軸に巻くのですら難しいのですから、連続的に太さの変わる軸などに巻いていくにはさらに高度な技が必要になるはずです。
そして、この萬年筆、どうやらラヴレターインクを呑ませていたようですね。しっかり洗浄しておかなくてはいけません。
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