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2021年10月 1日 (金)

棄却

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 いつものようにひっくり返されてもてあそばれている「ちち(仮名)」さん。もてあそんでいる長男は、毎朝一番に保育園に預けられて、そして最後に引き取られるという生活を月曜から土曜まで続けていた子どもでしたが、立派なおっさんになりました。保育園というのは感染症の巣みたいなところで、月曜の朝には元気でピンピンしていた子どもが、水曜から木曜あたりには鼻をすすりだします。金曜の朝には後ろめたく思いつつ預けて、神仏に祈りを捧げながら仕事をし、土曜の午後に迎えに行くときには神仏のご加護に感謝の言葉を述べながら・・・という生活。途中から土曜日が金曜日に変わったのは本当にありがたいことでした。

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 PILOTのスーパー500とその復刻版であるウルトラ。写真の出来が悪いので「どっちがどっちでしょう」とごまかしておきましょう。今日はさいたま地裁で、いったん延期となっていた判決が出ましたが、それもごまかしとかなだめすかしとか、そんな印象が拭えないものでした。

 公立校の教員が県の教育委員会に対し、未払い賃金242万円の支払いを求めて提訴したことに対して、請求を棄却する、という判決が出たのです。ただ、いわゆる給特法が教育現場の実情に適合していないのではないか、と裁判官が付言したことが話題となっています。

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 私の学校のある先生は、朝8時過ぎに出勤して活動的な服装に着替えるとすぐ教室へ。職員室でずっと座っていた場合、私が次にその先生の顔を見るのは午後3時半頃です。そこから勤務時間終了となる午後5時までの間に残った仕事を片付けて退勤。20分少々の超過勤務ですが、勤務時間が始まる少し前に出勤、というのは社会人にとっての「たしなみ」のようなものですので、あえて問題にはしません。ではこの先生、いつ休憩を取ったのでしょうか。労働基準法34条においては、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分の休憩時間を、それも労働時間の途中に与えなければならない、とされています。なおかつ、休憩時間の間は、労働から解放される必要があります。

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 今年はコロナ禍のため、夏休みが終わったあと少しの間、給食の提供が行われず、児童はお昼までの授業を終えると下校していました。午後からも授業を行うことになったとき、子どもたちは給食が食べられると大喜びでした。本校の給食は一食246円で、実においしいのです。先生方も給食代を払っていますので同じものを食べますが、コロナ禍ですので配膳も先生がすることになっており、やっと全員に給食を配り終えたら子どもたちの様子を観察しながら喫食となります。普通の人と違うのはここのところで、お昼ご飯を食べている間も仕事中なのです。お昼休みになると子どもと一緒に運動場で走り回って遊ばなければなりませんので、私の学校の先生達には実質的に休憩時間がないと言えます。

 この異常な事態、一体誰の責任なのか。それはもちろん、校長である私の責任。つまり、すべての先生が、毎日最低45分、何もせずにいられる時間を確保しなければならないのです。午後3時半に子どもたちが帰ったあとにその時間をとるとすれば、午後4時15分までの間、先生達は学校の外に出て喫茶店で休憩していても良いわけです。ただし、休憩時間が終わったら、勤務時間が終わる午後5時までの間に事務仕事や授業の準備を終えないといけません。うちの先生達が子どもたちに授業をしたり、いろいろな指導をしたり、一緒に遊んだりする、それ以外の仕事をするための時間は1日あたり45分しかない、ということになります。

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 萬年筆のキャップをとったらペン先が見えるはずなのに、実際はこんなものを見てしまったら、びっくりしませんか。キャップについているクリップは可動式で、そのための「逃げ」を確保するための溝がもうけられた白いものと、それに続くタコの脚みたいなもの。これらは本来、キャップの内側に固定されているべきもので、萬年筆の胴軸などと一緒に外に出てきてはいけないものです。

 修理に出せば良いのに、面白がってそのままにしていると思っている方も多いでしょう。実際には一度修理に出したのですけれど、誰でもその名を知っている高名なペンドクターから直々に「そのままお使いください」と返却されてしまいました。この白い樹脂の部分に接着剤を塗ってキャップに突っ込めば問題解決なのでしょうが、それは最後の手段。もしそれをやってしまったら、その先、二度と修復することができない可能性が高いのです。ならば、だましだまし、いたわりながら使ってやってください、ということなのだと理解しました。

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 今回のさいたま地裁の判決、もし請求が棄却されず、一部分でも支払いを命じるという判決が出ていたら、それこそ大騒ぎになります。1日あたりわずか45分という時間で、翌日6時間分の授業の準備をして、ご家庭からの連絡にお返事を書いたり、遠足代やら教材費やらの計算や請求のお手紙作成、業者への精算・支払いなどもすべて終わらせなければなりません。もし午後5時を過ぎても仕事が終わらなかったら、それは残業とは認められず、「教員が自主的に」つまり、やらなくてもいい、誰もやれとは命じていない仕事を教員が勝手にやっている、という前提で、日本中の公立学校は運営されているのです。そして、小さな声で言いますが、先生って、仕事の進め方が非効率的な人がけっこう多いのです。残業なんか認めたら、それだけで47都道府県中、少なくとも40くらいは財政破綻してしまうでしょう。だから裁判所も、残業代なんて認めるわけにはいかなかったのだと思います。

 そんなもん、学校だけじゃない。いや、民間企業はもっと大変なんだ。イヤなら教員やめればいい。それが世間の皆さんの大多数の声です。だから私は、教育実習に来る学生にも、「本気か? 大丈夫か?」と言ってます。この状況で教員を目指すなんて、頭がおかしいのです。先生達がみんな、アホくさい、やってられるかぃ、と言ってやめてしまったらいいと本気で思っています。そうなったらはじめて、政府も国民も、この問題が、自分たちがバカにしている先生たちのわがまま、ではないことに気がついてくれるでしょう。あと半年で私は教育の世界から消えてしまい、先生達、みんな大変だろうなぁ、と思うだけのただの老人になります。今回の請求棄却は残念ですが、裁判官が付言してくれたことは少しだけ評価できると思っています。

 あ、修理されず返却されたスーパー500のキャップについては、面白がりながら使い続けます。これは生き死にに関係ないですから。

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コメント

ちょっと前まで日本人は他人に感謝の気持ちを持ちながら暮らしていた所があったと思います。皆が少しずつ「持ち出し」をしながら世の中を回していた気がするのです。
でも今は他人へ感謝の気持ちが薄れ、如何に自分を主張するかという風潮が蔓延っている…様に感じています。
ひと昔前に流行ったドラマの名台詞「同情するなら金をくれ」うん、時代を先取りしてたんだなぁと思います(笑)

 すいどう さん

 もしあなたが自分の受け持っている子どもとうまくいってないと感じてたとしましょう。そしてそのままその子は卒業していった。何年か先に街角で「せんせい!」と声をかけられたとき、こえをかけてきたのが、そのうまくいかなかった子で、なおかつニコニコしていたら、それだけであなたの仕事はうまくいってたんだと思いなさい。それが先生って仕事の良さなんですよ。と若く、悩んでいる先生に話すことがよくあります。いわゆるノルマもなく、本当に良い仕事だと思うのですが、今の状況では若い人に勧められない、それが残念なところです。

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