お利口
耳を掻くと叱られて、それがお母さんだったりするとポンッと頭を叩かれたりもするので、寝ているように装いながら、そっと耳を掻くことを試す「くま(仮名)」さんです。もちろんバレバレなので、寝ているのを装っている、その目をつぶった状態のまま叱られて、掻くのをやめるしかない彼女なのでした。
夕刻、さぁ帰ろうかと思っていたところへ、教育委員会の事務局から電話が入りました。私の勤務先は、お国が進めている「スマートスクール構想」のための実証実験校に指定されています。要するに、ICTを活用して学校の業務を徹底的に効率化し、先生方のブラックな状況を少しでも改善していこう、ということなのです。まぁ、人を増やせば解決する問題ですけれど、それにはお金がかかるから、おもちゃを与えて黙らせておこう、ということです。
教育委員会事務局の担当者は、私の声を覚えていて、いきなり懇願モードに入りました。曰く、スマートスクール実証実験のさまざまな手続きの中で、「効果検証」のためのデータが必要なので出してもらえないか、というわけです。今、現場が無茶苦茶に忙しくて、それがどのように改善されたのかを実証する必要があるので、すべての職員の時間外勤務状況を調べて提供してほしい、というのです。私の勤める自治体では、超過勤務や休日出勤などの実態を30分単位で記録して提出することが義務付けられているのですが、提出しなくても罰則はなく、チェックも入りません。ご存じのように1か月あたり80時間以上の超過勤務となった場合は本人と管理職とが話し合いをしたうえで産業医のカウンセリングを受けることになっています。けれど、カウンセリングを受けるためには膨大な書類を提出する必要があり、受けた後にもこれまた山のように報告書類を出す必要があるので、誰もそういう制度を活用しようとはしないのです。
今や、勤務状況記録票を提出していない職員の方が多数派になってしまいました。それを全員分まとめて明朝までに出してほしい、なんて言われたら参ってしまいます。結局、出張伺いや年休届、時間外勤務の申請書などを参照しながら、一人一人の超過勤務状況を「再現」することにしました。教育委員会事務局に無理を聞いてもらうこともあるでしょうから、向こうが困っているのなら協力してあげるのは当然です。
夜の9時過ぎから作業をはじめて、50人分すべて完了したのが午前4時過ぎ。こんなに手間がかかるものならば引き受けなければよかった、と思っても後の祭りです。
深夜にだれもいない職員室ですするカレーラーメン、なかなかのものです。スマートスクールとは言いますけれど、それを実現しようともがいている人達の中には、けっしてお利口とは言えない、私みたいな人も結構混じっているように思います。学校のICT活用は、いまだ前途多難、出口どころか入り口すらはっきりとはわからないのが現状です。この記事へのコメントは終了しました。
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