手抜き
クッションの縁に顔をうずめて眠る「ちち(仮名)」さん。飼い主も授業を担当していた頃は、多少なりとも持ち帰り仕事をすることがあって、そういうときは彼女たちを羨ましく思っていましたけれど、今や彼女たちと一緒になっていびきをかくだけのオッサンです。
7時間45分の勤務時間に45分の休憩時間を加えて8時間30分の拘束。私の職場は8時25分始業ですから、16時55分を過ぎれば大手を振ってさようならと帰れるわけです。
実際には、子どもが無事学校に着くかどうか心配だから先生たちにはしっかり出迎えてもらいたい、という保護者の(ひそかな)要望に応えて、小学校の先生たちの多くは7時30分過ぎに出勤されています。そして、児童生徒が16時過ぎに下校してから事務仕事などをはじめるので、大半の先生は18時頃の退勤となります。私の職場には優秀な人が多く集まっていますので、仕事が遅いわけではなく、みんな手を抜かないからそうなるのです。
さて、そんな職場に今年もアンケートの季節がやって来ました。エクセルのブックに、質問の書かれたシートが55人分収められたものを共有フォルダに入れておき、各自が回答して最後に管理職が集計する、というものです。ある人がブックを開いて回答①シートに自分の答を記入し、上書き保存してブックを閉じると、別の人が同じブックを開いて回答①シート以外のシートに答を記入し・・・・・とやっていくわけです。前回、この方式でアンケートを採ったときには、55人が回答したはずなのに答の入っているシートは45枚、なんておかしなことになりました。そう、何も考えず、画面もろくに見ないで、他人が回答済みのシートに自分の答を入れてしまう人がけっこういたのです。
なので今回は、回答①、とかいうシート名を、職員個々の名前にしてみようか、とも考えたのですが、そうするとアンケートの匿名性が損なわれてしまいますし、あの人はどんな答を書いているのだろう、とのぞき見る人が出ないとも限りません。 よっしゃ、それならこの手で行こう、と考えたのがこれ。シート名を動植物の名前にします。先生方には動植物名のカードを引いてもらい、引いたカードと同じ動植物名のシートに入力してもらい、回答が終わったら私の机の上に置いた箱にカードを入れる、という方式です。これなら、カードの戻りをチェックすることで全員が回答したかどうかもわかりますし、何よりちょこっと話題性があって面白そうです。
ということで、勇んでカードを作り始めた私ですが、すぐに「ん?」となりました。それだけ手間暇かけてやるようなことなのか、という疑問がわいてきたわけです。そう、学校の先生が忙しい理由のひとつがこれ、「無駄に手間暇かける」という習性なのです。それがプラスに作用することももちろんありますが、私が思いついたことなどは無駄でしかありません。結局、好きな回答シートを選んで回答してもらい、回答後はすぐにシートタブを右クリックして「非表示」にしてから上書き保存してブックを閉じる、という方法に落ち着きました。その回答方法を朝礼で説明しましたところ、シートの非表示、再表示の方法はおろか、そういう機能が存在することすら知らない先生がかなりの数いらっしゃたのです。無駄な手間をかけずに手を抜くことが、むしろ先生方のICTスキル向上にもつながったのです。
教員が多忙であるということが言われて久しいのですが、忙しさの中、効率的な仕事の進め方や、手間をかけたこととその効果との対比についても考えてみること。いい意味で手を抜くことも大切なのではないかと思い知った次第です。
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