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2017年11月22日 (水)

治療は格闘技

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 同居している雌の羊に顔を近づけて、さかんに匂いをかぐ白丸くん。いい夫婦の日ならではの光景と思いカメラを構えましたら、恥ずかしかったのか少し離れてしまいました。

 雌の羊は「14番」と呼ばれる個体でした。羊だけに、皆がめいめい勝手に「天使」だとか「いよ」だとか呼んでおりましたが、飼育の最前線では「としこ」と命名しておりました。何のことはない、みな数字の読み方を変えただけです。対する子どもたちは、良く鳴くのと体毛の色から「メープル」と名付けようとしていたようですが、べたべたしてそう、なんて反対意見も出て、結局正式な名前は「バニラ」になったようです。今ひとつ実感が湧きませんが、白丸と名付けられたときも同じような感じでしたから、呼んでいるうちに慣れるものなのでしょう。

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 身柄を確保され、軟膏を塗られているももちゃん。昨年の春、私の職場の法面で産まれた子です。10月の半ばあたりに、目の周りが白くかさかさになっているな、と気づいたのですが、気温が下がり、空気が乾燥してくるにつれて悪化し、痒くてあちこちにこすりつけるせいでしょうか、血が滲むようになってきました。まぶたが腫れぼったくなって、昨日あたりは試合後のボクサーみたいになっておりましたが、獣医さんに軟膏を塗ってもらって少しは改善したのです。

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 どんな軟膏を塗るのかと思えば、人間様の皮膚炎や赤ニキビなどによく効くというこちらのお薬でした。抗菌剤やステロイドなどが含まれていますので長期間の使用は良くないそうですが、とりあえず1週間ほど毎日塗ってようすを見ようということになったのです。

 効果は絶大で、1日経った彼女の皮膚は大幅な改善の跡が見られましたので、頑張って今日も塗ろうということになったのですが、問題はどうやって羊を捕まえるか、です。羊は集団行動をする習性があり、1頭だけになるとパニックを起こすとも聞きます。昨日は他の2頭を小屋の外に閉めだしてももちゃんだけを狭い小屋の中で抑えようとしたのですが、予想外に難航しましたので、本日は3頭とも小屋の中から出られないようにして置いて、大好物の米糠を食べさせて置いて真後ろから迫る、という作戦をとりました。

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 バニラさんと並んで米糠を食べているところに真後ろから近づいて羊乗りに。羊の視界は135度ぐらいあるといいますから、真後ろ以外はほぼすべて見えているのです。モフモフの羊毛をかき分けて、首輪を掴むことに成功したところです。後ろ脚の付け根を掴むと動きを止める、なんていう話も聞いて試したのですが、そもそもそんなところを掴ませてはくれません。羊乗りになって、首の下側を持ち上げるようにするとおとなしくなるというので、その姿勢で薬を塗ります。

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 この軟膏はとてもねっとりしていて、作業後、何度も石けんを付けて手を洗ってもなかなかとれないほどのものです。屋外を走り回っている羊差んにはこれくらいがちょうど良いのですけれど、粘度の高い軟膏をでこぼこざらざらの皮膚に塗り伸ばすのはとても難しい作業でした。彼女をこんなにしっかりと抱きかかえたのは、赤ちゃんの時、体中に着いた糞を落としてやるためにお風呂に入れたとき、そして用水路に落ちたのを救出したときに続いて3回目です。普通の人は死ぬまで羊など抱えることなく終わるはずですから、よほどのご縁があるのでしょう。

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 耳もかさかさなので、シルヴァー人材センターから派遣されてきてくださっている用務員さんにと二人がかりで塗り塗り。用務員さんは3名の方が交代で来てくださっているのですが、この方はとても羊を可愛がってくださっていて、朝、羊小屋を見て綺麗に掃除されていると「今日はこの人の勤務日か」とわかる、というぐらいです。

 一連の写真を撮ってくださったのはホンマもんの教頭先生。羊たちが脱走しないよう、小屋の出入り口を封鎖して、動きの激しい被写体を追いかけて撮ってくださいました。羊1頭の治療に3人がかり。愛娘が綺麗なお肌を取り戻すことができるよう、来週いっぱいはこれを続けなければなりません。

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