土地のものを食べる
さかんに顔のあたりをこすっている「くま(仮名)」さん。ひとしきりムニャムニャとやったところで、写真を撮られているのに気づいて動きを止めてしまいました。この、仰向けにひっくり返った姿勢のままで、前脚を顔から離して顎の下あたりでかまえたまま、じっと目を閉じているのです。
カメラを引っ込めると、また何事もなかったかのようにムニャムニャとやり始めました。電車の中でもどこでも、周りに人がいないかのごとく平気で髪をとかしたりお化粧したりしている「若くて美しい」女性たちとは違う精神性を持っているのかもしれません。
本日、飼い主は、腕も美脚も放り出した「若くて美しい」女性たちや、一日お仕事をして疲れたおじさんたちなどがごちゃ混ぜに詰め込まれた夕方の新快速電車に乗って、なぜか姫路をめざしました。
新快速電車に乗る前に大阪駅前第3ビルに立ち寄って、冷たくて腰のあるおうどんをいただいたので、姫路までの1時間、ずっと立っていても別段くたびれることもありませんでした。ほぼ一日中立っている仕事をしているのですが、思い起こせば新任まもない頃はやたら腰が痛かったものです。
私、うどんは好きではありません。けれど、時には客を叱りつける怖くてオモロいおっさん、あるいはその弟子がやっている店だけは例外です。
姫路に着いた頃にはすっかり日が暮れておりましたが、暑さは変わらず、お城の近くまで行くのはあきらめて望遠撮影でお茶を濁しました。できたてほやほやですから、実に白いですね。
で、帰りに明石で途中下車。明石へ来たからには、この看板のようにお魚を食べるとか、卵焼き(明石焼き)を食べるとかすべきでしょう。けれど、そこには大きな落とし穴があるかもしれません。
その昔、萬年筆趣味の不良中年が集まって旅行をしたときに、きらきら輝く日本海が目の前に広がるお店で「お刺身定食」を頼んだ人がおりました。そのお値段、実に2500円。魚が大嫌いな私はもったいないと思ったので少しでも安く上げようと1500円の「焼き魚定食」を頼んだのでした。
お刺身定食、まずは小鉢に入ったお刺身が出てきました。お箸を動かすこと、5、6回分でしょうか。突き出しみたいな感じでこれなら、メインのお刺身はどれほど素晴らしいことか、お魚好きなオッサンたちはワクワクしておりました。一方、魚が大嫌いな私でしたが、団扇ほどもある大きなアジの開きが出てきて、これがまた超絶うまいのです。あぁ、魚をおいしいと思うこともあるんやなぁ、さすが海のそばやなぁ、と思いつつ、お刺身定食のその後に注目しておりました。
しばらくすると、お刺身定食を頼んだ人にも、焼き魚定食を頼んだ人にも、等しくカニの脚が一本入ったお味噌汁が運ばれてきました。この時点で、魚の大嫌いな私もアジの焼き魚を完食。「みずうみのあくま」さんのお皿を見ると、アジの骨格標本が乗っている・・・・・という状態でした。
焼いた魚でこれだけおいしいのだから、お刺身はもっと凄いだろうな、お味噌汁のあと、焼き魚定食との差額、1000円分でどんな凄いお刺身が出てくるのかな・・・・・というオッサンたちの期待もむなしく、お味噌汁にはご飯がつきもので、以上でごちそうさま、となったのでした。
そういう悲惨な光景を目のあたりにした私は、魚ん棚で知られる明石なんだからお魚だろう、という考えは危険だと思ってしまうのです。なので、ケロ御大が見つけ出すのに半年かかったという幻のステーキ屋さんで晩ご飯です。
お昼の定食が大変コストパフォーマンスに優れることで知られているお店ですけれど、夜にステーキ食べてもなかなかのものです。お肉のグレードが2段階ありますが、食べ物の味なんぞロクにわからない私にはお手頃な方でも凄くおいしい、と感じられました。おいしいものがわかる妻も同意見でしたので、まぁ大丈夫でしょう。この次はぜひ、お昼にお邪魔しなくてはいけませんね。
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