すぷらった
ほぼ毛が生え替わって、すっきりとした見た目になった「ちち(仮名)」さん。飼い主が近づくと喜んで必死でしっぽを振ってくれるのですが、このしっぽが実に貧相で、巻き尾の状態になっていても全くそれらしくない、柴犬にはあるまじろな姿形です。これからしばらくの間、「お前、貧相やなぁ。」と毎日言われながら過ごすのですから、ワンコとはいえお気の毒です。
夕刻、果てしなく続く会議のさなかにかつての同僚から電話があって、萬年筆のインクが出ないので「調整」してください、と言われました。言うまでもなく私は、萬年筆の調整なんて全くできません。それでも、全くインクが出ないというものなら、ちょびちょび出るくらいにはなるかも、という淡い期待をしつついらっしゃい、とイチビって答えましたら、本当に来てしまいました。
ブツは、採点用に使っているというLAMYのアルスター。サファリでは少し軸の感じが、ということでこれにしたそうですが、字幅はMかFあたりで、スリットもこれ以上ないほどぴったりと閉じていて、私が見てもインク出ないの当たり前、とわかる状態でした。こんなにちっこい鉄のペン先をいじくってスリット広げるなんてことはとても無理ですので、とりあえずお掃除だけしておくことにしました。
写真を撮るのを完全に忘れていたので、あとから持ち主に撮ってもらったのですが、残念ながらぼけてます。この萬年筆のペン芯には訳のわからんインクカスがびっちり付着していましたので、きれいにお掃除して再度セットした後、親方に教わったやり方でペン先とペン芯の密着度を高めようとしていたとき、異変に気づいたのでした。
音がするのです、このサファリ。軸を持って振るとカラカラという音が聞こえます。さては、素人の私がペン先なんぞを抜いたのでどこかを壊してしまったか、と観念したのですが、あまりにも清く正しいこの音は、そう、あれに似ています。いや、あれしか考えられません。
こんなことができるなんて思ってもみませんでした。持ち主曰く、ペンとカートリッヂをセットでもらったのだそうで、ということは、その前の持ち主もこの状態で使っていたということになります。ペン芯やペン先には違う色のインクを使った痕跡も見受けられましたので、インクが混ざったことによるカスの沈着や、そもそもインクの供給が満足できる状態ではないということからインクの出が悪くなっていたのだと思われます。
しかし、プラチナのカートリッヂがアルスターに、何の違和感もなくささっているのは感動的でした。しかもそのささり具合が、緩くもキツくもありませんから、これが普通だと思っていたのも無理のないところです。まるで四日市の方から来たようなこの組み合わせ、いいものを見せてもらいました。
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
ということは、プラチナのクリーナーキットが使えるということですね。安全性に疑問は残りますがこのアルスターくらいギトギトだと試してみる価値はあるかもしれません。しかし…これはすごい大発見です。
投稿: すいどう | 2015年4月16日 (木) 00時58分
つきみそうさん、こんちはー。
いやー、万年筆に詳しくない(ユーザでも)人は
インクカートリッジは共通のものと思っていることが
多いようですよ。
見た目が似ていると言えば似ている(当たり前か)ので
問題ないと。問題があるという発想がそもそもないのかも。
インクも同じ色なら別のメーカのインクでもOKと
考えているようで、普通はそんなものなのでしょうね。
投稿: ぽち | 2015年4月16日 (木) 21時05分
ぽち さん
そんなもんでしょうねぇ。LAMY、それもサファリやアルスターあたりなら、ちょっと大きな文具店とか、ファンシーショップなんかで普通に売られてますから余計にそうなるのかも知れません。
でも、サファリ系は例の胴軸を締め込んでカートリッヂを槍に挿す、という手法ですから、プラチナの玉入りカートリッヂを押し込むのはなかなかに力が要る仕事だったと想像します。自分も実験してみたい衝動を抑えるのに苦労しそうです。
投稿: つきみそう | 2015年4月17日 (金) 06時43分
ということは、モリソンにはラミーのコンバーターが使えるということですね。
投稿: Polnolunie | 2015年4月18日 (土) 00時13分
Polnolunie さん
たしかに、モリソンにはプラチナのカートリッヂを使うモデルがたくさんありますから、合うかも知れませんね。
もし合わなければ・・・合うようにしてください。それこそがあなたの使命です。
投稿: つきみそう | 2015年4月18日 (土) 01時14分
すいどう さん
この件に関して、実験してみようとは思いつつ、ちょっと怖いなぁ、とも。けれどネタがサファリなら、壊しても引きつった笑いで済ませられるギリギリのところですね。
投稿: つきみそう | 2015年4月18日 (土) 21時32分