こなまるけ
見るがいい・・・・・などと言わなくても、黒い犬が獲物探して駆けていくというのは、我が家ではよく見かける光景です。この黒い犬「くま(仮名)」さんは靴下が大好きで、脱いだものを一瞬でもそこに置くと持ち去ってしまいます。特に女性のストッキングなんてものは普通に履いたり脱いだりしてもダメになるものらしいので、犬にかじられたりなんかすると一発でダメになるのでしょう。時折、乾いた洗濯物を取り込んでいるときに彼女に奪われて、「ダメダメ・・・あぁ~・・・・・もぅ、あげるわ、それ。」なんていう声が聞こえてくることもあります。
工房 楔謹製ののカッターナイフと、OmasのA.M.87。花梨とブライヤーという素材の違いはありますが、どちらも木目で勝負の一品です。カッターナイフは普段、職場の机の引き出しに入っているもので、誰かに貸すと「おぉ~」という声が出て、ほぼ確実に戻ってきます。普通のカッターナイフを貸した場合、戻ってこないことの方が多いのを考えると、これは実に良い特性です。
こちらは、モリソン萬年筆による屋久杉萬年筆と、名古屋の黒い人、でらくろさんが心を込めて削り上げた欅のカッターナイフです。針葉樹と広葉樹、それぞれの木目の美しさが良く表現されていると思います。ガウディやルイジ・コラーニも脱帽するようなオーガニックなデザインのカッターナイフは、実は機能性を第一に考えて削られたもの。けっしてただのけれんではないのです。
長女に握らせてみたところです。最初は、このカッターナイフの持ち方に戸惑います。戸惑うと言うより、手渡されても握り方がわからないことも多いのです。でも、この写真からもわかるように、握った手とカッターナイフが一体化しています。で、人差し指は何をしているのか、というところがまた凄いのです。人差し指をあてているところにも窪みがあって、そこに指がピタリと収まります。カッターを握る手を真上から見たとき、切ろうとする線とカッターの刃、そして人差し指が一直線に揃うのです。
実際にものを切ろうとする状態ではなく、やらせで撮るとこうなります。揃ってないやん、という突っ込みが入りそうですが、力を入れて切ろうとすると自然に揃います。萬年筆などでよく焦点が合わないなどということが言われます。ペン先ではなく、ペン先の裏側、ペン芯のあたりから筆記線が産み出されるような感覚。カッターナイフでものを切るときにもよく似た状況になることがあって、それを何とかしたい、という思いから産まれた発明なのです。
名古屋には「闇船」なんて人もいますが、黒いけれども「闇とは違うのだよ、闇とは。」という声が聞こえてきそうな一品です。これでものを切れば、綺麗に切れます。「見事だな。しかし小僧、自分の力で切ったのではないぞ。そのカッターナイフの握りのおかげだという事を忘れるな」ということなのです。
名古屋市内某所のマンションの一室で、一心に木を削る黒い人。削り落とされた木の粉が宙に舞い、その黒い黒い全身が、見る間に粉まるけになっていくのです。そこへ帰宅された強運で名高い奥方は、粉まるけで「黒い夫」をご覧になってさぞ驚愕されたことでしょう。しかも作業されているそのすぐうしろの壁には、翌日お仕事に着ていくための「黒いスーツ」が吊されていて、それも見事に粉まるけでまっしろに・・・・・。でも、その成果がこれなのです。いずれ、さまざまな改善を施して公開されることになるであろうこのカッター。おすすめです。
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文房具に関しては、万年筆以外には余りコストを掛けきれない「軟弱者っ!」なわたくしですが、それでもまたこんな無駄なもの買って…などはよく言われます。「(家人から)なじられないで一人前(のヘンタイ)になった奴がどこにいるっ?」と開き直って今後も精進を続けたいと思っております。
投稿: すいどう | 2015年1月10日 (土) 19時52分
こなまるけ、
が方言だと今日初めて知って
かなりショックだったでらくろです。
欅グリップカッターを特集していただき
ありがとうございます。
現在のこなこな状況ですが、
健康被害の可能性があると知り
小学生以来したことのないマスクを装着して作業。
こなこなよりも息苦しい。
なにかいい方法はないものか。
ホビー系の集塵装置導入が必要か。
それは妻の承認を得ることは可能か。
もっと簡単な方法はないものか・・・。
考え考え抜いてひらめきました。
こなこな、といえばほこり。
ほこりといえば掃除機。
掃除機のホースをお気に入りのアングルバイスで固定して、
切削ルーターのスイッチをいれたら
掃除機のスイッチをON、
ホースの口のすぐ近くで削れば
こなこなは見事に吸い込まれていきます。
相棒のアングルバイス、グッジョブ。
めでたし、めでたし。
いつの日か、つきみそうさんから
さらに出来るようになったな、でらくろ
とのお褒めのお言葉をいただけるよう
精進いたします。
投稿: でらくろ | 2015年1月10日 (土) 22時54分
すいどう さん
いや、お見事。人になじられずに・・・のくだり、思わず膝を打ってしまいました。萬年筆なんぞ好きなモンはヘンタイ、そやけどワシらは良識あるヘンタイやねん、というのが我が総統のお言葉なのです。
投稿: つきみそう | 2015年1月11日 (日) 03時50分
でらくろ さん
いや、今日はお会いできて実に愉しいひとときを過ごさせていただきました。
いつもながら感心させられるのが、「そこらにあるものをうまく使う」というところであります。お金を出してものを買いこんで(設備を整えて)やる、というのはそれはそれですばらしいのですけれど、身近にあるものを何とか使えないものか、とひとひねりされる姿勢がすばらしいといつも感心させられ、また、なんでも道具揃えて形から入ろうとしては挫折してばかりの自分への戒めとさせていただいております。ありがとうございました。
ちなみに、私は方言大好きです。特に名古屋近辺の皆様とおつきあいいただくようになってからは。
投稿: つきみそう | 2015年1月11日 (日) 03時53分
粉まるけ,懐かしい響きです。
長野県南部の出身ですが,そこの方言には静岡や愛知のそれが出所とおぼしきものが結構あるみたいですね。
昔泥だらけになった時に「泥まるけ」と言われたのを今,思い出しました。尤も,最近は,20代より若い人々の間では,方言がほぼ駆逐されている状況ではあるようです。
故郷で生まれ育ったとは言っても18歳まで。高校卒業後,現在まで長野県以外の地で過ごした通算年数の方が,育った年数のダブルスコア以上となった今,改めて遠くなった田舎を思います。
投稿: monolith6 | 2015年1月13日 (火) 14時56分
monolith6 さん
実はこの記事の日付の翌日に、このカッターナイフの作者とお会いしました。そして、粉まるけのほかに泥まるけという言葉も出ておりましたが、いずれにせよ、「まみれ」や「だらけ」とは明らかに違う、ということで意見が一致したのでした。方言には、標準語では表せないニュアンスが含まれている場合が多いですね。
ちなみに私など関西人は、よそで暮らすようになっても関西弁で通そうとするものが多いそうです。実は関西系の言葉を「母語」に持つ人ほど、標準語を上手に話すようになります。一方、標準語のベースになった東京あたりの言葉を「母語」に持つ人は、どうにも関西弁がうまくしゃべれないようです。この違いは、耳の使い方の違いと聞いたことがあります。
投稿: つきみそう | 2015年1月13日 (火) 21時09分