我が師、デスクペン
先日の写真と同時、別アングルで撮られた「くま(仮名)」さん。半眼でいかにも眠たそうです。お気に入りのクッション、今のところは無事ですが、そのうちお腹の調子が悪くなったらまた汚してしまうかもしれません。
幼い頃の彼女は、外に散歩に出たときには一切排便せず、必ず夜の間にケージの中で、というパターンでした。歳を重ねて気が大きくなったのか、タイミングさえ合えば散歩の時にということも多くなりましたが、今もなお、夜の間に済ませていることがあります。そんな翌朝は、本当にホッとしたような顔で飼い主を見て、掃除をしてやると嬉しそうにトイレスペースに収まって寝転ぶ、というのがいつものパターンです。
机の抽斗に無造作に放り込まれたデスクペン。私の主力萬年筆です。公立中学校の場合、生徒が学校に来る日は年間200日ぐらいですが、教師は春夏冬の長期休業中も勤務ですから年間250日ぐらい出勤というところです。このペンはもう少し多く、年間300日ほどは働いているものと思われます。年間350日ほど仕事をしている、という先生も少なからずおりますから、職員室にある電化製品、特にPCなんかはほとんど休みなく働き続けていることになります。そう考えると、私のデスクペンは比較的ゆったりと働いている方なのかも知れません。
ワンコインで買えるこのペンは実に良くできていて、数ある私の萬年筆の中でも一二を争う「マシな字」が書けます。きちんとした書類はことごとくこのペンで書いていて、このペンで書いた文字ならば書類を破り捨てたくなる衝動にかられることもありません。今もし、このペンを失ったら、それは私にとって相当な打撃です。
年に300日しか出勤してないと聞けば、大阪市長様は怒り狂うことでしょう。幸い、私は大阪市の職員ではありませんので、健康管理のため、日々の超過勤務時間を記録して、月に80時間以上超過勤務をすると産業医によるカウンセリングを受けられることになっています。同じ職場には1日あたり6~8時間、休日出勤も入れると月に150時間以上超過勤務をしている人がごろごろいますが、産業医がどこにいるのか、カウンセリングを受けるとどういうメリットがあるのか、知っている人は誰もいません。カウンセリングを受けた人がいるという話も聞いたことがありません。
あくまで超過勤務を記録するだけで、それを教育委員会に報告する必要はありません。もし誰かが過労死するようなことがあったときだけ記録がチェックされ、「こんなに超過してるのに放っておいたのかっ!」と現場の校長や教頭が叱られて処分を受けて一件落着です。

机の抽斗にはデスクペン、スーツのポケットにはキャップレスデシモ。この2本でほとんどの筆記をまかなっています。最初のうちは毎日、このデスクペンで「今日は2時間の超過勤務」なんて記録していたのですが、記録したからといって何の意味もなく、記録しなかったからといって罰せられることもないと知ってからは、清く正しく、毎日一切の超過勤務なしで過ごすことにしています。
豪華で煌びやかな限定萬年筆。その多くはしっかりしたペンケースに収められて大切に扱われ、ごくたまにしか文字を書かないことでしょう。一方でインクカートリッヂが空になったとき以外一切のケアをされることもなく、それでもノートラブルで実用に足る文字を書き続けてくれるデスクペン。萬年筆に感情があったとして、このデスクペンは夜ごと居酒屋で安酒あおって愚痴るでしょうか。案外、文句ひとついわずに黙々と字を書き続けるのかも知れません。
できることならばこのデスクペンのような人になりたいと思いますが、残念ながらそこから最も遠いところにいる自分。少しでも近づけるように努力することができればよいのですが、どうも私の場合、死ぬまで自分を嫌い続けるだけで終わりそうなのが情けないところです。
コメント
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その2本さえあれば他はいらない境地になるのはいつの日か(他人ごとではなく)。そんなひは永遠に訪れないような気もします。贅沢な話ですが、過剰であるがゆえの2本。そう日本。
投稿: くーべ | 2012年5月 2日 (水) 07時52分
くーべ さん
うまい。うますぎる。
なおかつ深い。
投稿: つきみそう | 2012年5月 2日 (水) 13時33分