
娘の膝に前脚をかけて「でへへ」と期待に胸膨らませている「くま(仮名)」さん。ちなみに器の中身は菠薐草のおひたしですから、普通は犬が喜んで食べるようなモンではありません。彼女の頭の中には、飼い主が食べているもの=おいしいもの、というのがすり込まれているので、こうやってお相伴お相伴とやってくるのです。
人間が食べるものの中には犬にとっては命にかかわるようなものもあります。イカやタコ、甲殻類にネギ類など、それとわからないように混ざっているものもありますから注意が必要です。子供の頃飼っていた「ペス(実名)」くんはその辺、非常に賢かったです。ネギは犬に食べさせちゃダメ、ということを知らない母が味噌汁の残りにこれまた残ったごはんや魚のアラなんかを入れて炊いた「ごはん」を、きれいに刻みネギだけ残して食べてました。当時は、この犬、ネギ嫌いやねんなぁ、それにしても上手に残すなぁ、なんて笑ってたのですが、犬にしてみれば文字通り死活問題だったのですね。

ステッドラーの文具8点セットです。三角定規×2、分度器、直定規、鉛筆、コンパス、鉛筆削りと、これだけで7点ですので、コンパスについている短い鉛筆を入れて8点なのか、すべてを収めるプラスチックケースを含めて8点なのか、などと例によってしょうもないことで悩んでおりました。
で、8といえば綱引きなのです。今日は早朝まで雨模様でしたが、そこを何とか、ということで30分ほど遅れて体育大会を強行しました。結果はあとへ行くほど暑いほどの好天に恵まれて大正解。そして、個人的に体育大会の華だと思っているのが綱引きです。

1920年まではオリンピック種目でもあった綱引き。日本綱引連盟というのもちゃんとありまして、そちらでは「綱引き」ではなく「綱引」と表記することにしているようです。競技種目としての綱引は、1チーム8人(補欠2人)で戦うもので、チームの総体重ごとにクラス分けがなされます。WAGNERが参戦した場合、日本相撲協会と同じクラスに入れられてしまうのでしょうか。
運動会や体育大会における綱引きというのは、とにかく体重のある人や大きい人、力の強い人を集めて引っ張りまくって勝、というイメージが強いのですが、「綱引き大魔王」の異名をとる私は「綱引きは引っ張ったら負け」と教えています。綱引きのチームメンバーを集めて、一番最初にこう言うと、生徒たちは一様に怪訝そうな顔をします。これが小学生なら、「えぇ~」とか非難するような声が上がるのですが、そこはさすがに中学生、「何でぇ~?」ときます。

さて、このイラストの皆さんは勝てるでしょうか。相手が同格で、理論や技術も同じならいい勝負かも知れませんが、私のチームなら、メンバーが少々小粒であったとしても簡単に勝つことができるでしょう。この人たち、引き方がなってない、のです。
マシな引き方してるな、と思えるのは赤いはちまきのお姉さんにワンコぐらいでしょうか。おばあちゃんもこの中では意外といい引き方をしています。男性陣は先頭のオッサンと野球帽の少年が最悪で、髭のオッサンは多少マシです。何よりこのチーム、いちばんマシな引き方をしているお姉さんのポジション取りが悪いので、十分に力を出せていないと言えます。

見るからに怖そうですね。プロレスラーやオリンピックのレスリング選手だった人たち、総体重516キロのチームだそうです。このチームの戦略上優れている点は先頭にイカツい顔のオッサンを配している点。それだけです。ひいている人たちの姿を見ると、こりゃ勝てる方が不思議、とすぐわかります。
実際、総体重308キロの女性チームがこのチームに勝っているのです。写真に右端に写っているオッサン、特にダメダメですね。こんな姿勢で綱引きに勝とうなんて、綱引きの神様にバチをあてられてしまいます。

美しいですね。姿勢の違いに注目しましょう。先ほどのダメといわれたオッサンは、文字通り「引いて」いるのです。上半身の力の強さでぐいっと綱を引き寄せようとしているのです。野球やテニス、ゴルフなどで「バックスイング」ってのがありますね。前の方へ球を打つのに、まず後ろに向かって振り、その反動でがつ~ん、というわけです。綱引きは引いたら負け、というのは、バックスイング同様、引こうとすればまず前に出てしまう、そこをつかれたらアウト、っちゅうことなのです。
生徒にこれを教えるのに、「あなたは水泳選手で、これから背泳ぎの試合です。スタートの時の姿勢を思い浮かべてください・・・・・はい、ピストル鳴りました、スタートの瞬間の姿勢、どうなってますか?」これに対して、「大きくのけぞるようになって、足はプールの壁を蹴ります。」なんて答が返ってきたら「はい、そうです。綱引きも同じようにするのです。」と言うのです。
そうすると必ず返ってくるのが「運動場で頭うつやんかぁ」とか言う声。「チッチッチッ。打ちませんよぉ。相手も必死に引っ張ってるのです。目の前の綱に自分の全体重を預けてぶら下がる、そういう気持ちで行けばよろしい。ただ、このとき・・・・・」わすかな沈黙に、オッサン、何を言うんやろ、と生徒たちが注目したところで「空を見ることです。それで勝てます。」と厳かに付け加えて、レクチャーはおしまいです。

ここで一番重要なもの、それはレクチャーする人のカリスマ性です。惜しまれつつ神に召されたジョブズほどではなくても、生徒たちがこの人の言うこと信じたら勝てる、と思っていなければ意味がありません。ほんの少数でも、「あんなこと言うてるけど、ホンマかいな。」と思う生徒がいたらダメなのです。ここは「ワンピース」なのです。
先ほどのイラストのお姉さん、なんでダメかというと、綱の真横にきちんと入れていないのです。この態勢で引くと、綱を横向き(斜め)に引いてしまいます。理科で習う「力の分解、合成」っていう話を持ち出して、だからまっすぐ引かなきゃダメだ、と上級生を納得させていきます。綱引きの試合中、綱が蛇みたいに左右にのたうち回るのは弱いチームの証です。
本校の体育大会では、1チームが50人。1年生から3年生までの男女混合です。これを一番大きな(背の高い)3年生男子を先頭に、順次背が低くなっていくように2年、1年と並べ、その次は女子を背の低い順に並べて最後尾は一番大きな3年生女子。男女混合だと恥ずかしさが出る年頃ですし、学年混合も上級生への遠慮などが出ます。そういうことがなければ、純粋に背の順で高いものから低いものへと並べるのが勝ちやすいのですが、とりあえずこうすることで、綱が上下に波打つことを防げます。

理想的な姿ですね。試合中は「空を見ろぉ~っ!」と叫びます。必死になるとついつい腰を落とし、顔は綱の中心部を向いてしまいますが、それではダメなのです。ピストルの音と同時にみんなが後に倒れる、このときの「引き」がすべてです。だから、一番前に一番背の高い人を置くのです。背の高いの人が後に倒れると、それだけたくさん綱が動くはずだからです。
あとは、地面に足を踏ん張れるのと後に倒れるのとがバランスした角度、この写真ぐらいの姿勢でどんどん後に倒れ込むようにするだけです。よくある「腰を落として」なんてのはダメ。腰を落とした姿勢で綱を引くと、体が「く」の字に折れ曲がってしまうので、上半身が前に引っ張られたらアウトです。
おかげさまで、私の指導したチームは8戦全勝でございました。ありがとうございました。
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