夜店のペン
もともとは「くま(仮名)」さんのおもちゃであったぬいぐるみを咥えて、遊んで頂戴ポーズをきめている「ちち(仮名)」さん。彼女の後ろに見える白いカーテンに違和感を感じた方、鋭いです。いい観察眼です。彼女が引きちぎったところから、庭の草が見えております。手入れの悪い(と、いうより放置されている)庭ですが、生えている雑草も冬の雰囲気。今日で11月も終わりです。
こんな風に欲しい欲しいと願っていても遊んでもらえない仔がいる一方で、アイスキャンディーを食べていた長男が「あたった」と。キャンディーの棒に「当たり」っていうの、今でもあったんですね。しかも、もう一本どころか、1000円のクオカード進呈!!
早速、便箋に息子の名前とところを書いて、当たりの棒を貼り付け、封筒に入れて表書き。当然、すべて萬年筆での作業です。便箋にはペン先BBのペリカン・シャルロッテ。インクはPILOTの孔雀。しばらく書いていなかったので、いい具合に濃縮されて薄めの青インクといった風情です。そして表書きは、同じくペリカンのイカロス。郵便番号欄などもありますので、ENニブのEF、ということでチョイス。インクはウォーターマンのブルーブラックです。 この様子を見ていた娘曰く
「お兄ちゃんに書かせたらええやん。」
「いや、兄貴は萬年筆使わんやろ。」
「そやからぁ、萬年筆で書く必要がどこにあるのんよ。結局、お父さんが萬年筆使いたいだけとちゃうん?」
旗色が悪くなってきたので、おもむろにイカロスがらみの話。クノッソス宮殿、ラビリントス、ミノタウロスの話へと舵を切り、そこから「勇気一つを友にして」という歌の話になりました。小学生の次男も大好きだというこの歌に出てくるイカロスは、調子に乗って墜落した馬鹿者ではなく、鉄の勇気を持った青年として歌われております。こちらのサイトで、メロディーを聴きながら歌詞を見ることができます。
http://www2.chokai.ne.jp/~assoonas/UC196.HTML
我が家では、このイカロス、「夜店のペン」と呼ばれております。夜店で的あてなんぞをして、ちょっとええモンがあたった、というときに、こういうペンが出てくる、というのです。軸が透けていると、パッと見きれいですし、きらきらする飾りまで付いていて、子供だましには最高やんか、ということらしいのです。
まともに買ったら公立高校の学費1年分、というこのペンが、夜店の景品でっかぁ・・・。このペンの背景にはこんな物語があるんだよ、と語る父親。でもそれ、どう見ても夜店のペンやで、そんなに高いもんには見えへん、となじる家族。イカロスを失ったダイダラスさながらに悲しい気持ちになってしまう父親でありました。
このイカロス、もとはカチンコチンの、現行のものと同じMのニブが着いておりました。私の場合、細字にすると使用頻度が上がりますので、手持ちのENニブと交換。ところが、そのままですと筆記時、ペン先を上に向けるとイカロスが下に回ってしまいます。それでは魅力半減なので、専門家にペン先を差し込み直してもらい、今の姿になっております。家族は、イカロスが見えない方がまだ高級感があったのに、と無責任なことを言っておりますが、そこそこしなやかなENニブということもあって、気持ちよく書け、お気に入りの1本です。
主題歌「道化師のソネット」を歌いつつ、さだまさしさんが主演した「翔べ イカロスの翼」という映画がありました。たとえばかばかしくても、こうと思ったことを勇気を持ってやり抜く。イカロスには、そんなイメージがついて回ります。夜店のペンといわれようとも、私はイカロスが好きなのです。
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