フォト

最近のトラックバック

« 抵抗は無意味か? | トップページ | 東大寺ミュージアム »

2011年10月10日 (月)

鹿の角きり

Dscf0090

 奈良公園内の角きり場で逃げ回る雄鹿。奈良公園にはおよそ1095頭(23年7月調べ)の鹿がいて、そのうち雄は189頭(同)とされていますが、毎年8月下旬から順次捕獲しては角を切除する作業が続けられています。「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の・・・」というぐらいで、夏から秋は鹿の発情期。雌を巡っての争いだけでなく、奈良で暮らす人間に危害を加える恐れがあるということで、江戸時代のはじめから続けられている行事が鹿の角きりです。

Dscf0018

 ちょっとした競技場並の広さがある角きり場。ずいぶん前に来たときには入場料を払ってスタンドに上がり、気が済むまで見たら退散、というパターンでしたが、久々に来てみると入場券売り場の前は長蛇の列で、スタンド内も完全入れ替え制となっておりました。

Dscf0016

 見に来る人が格段に増えたというわけでもなさそうですが、自分の身の周りのことにも満足に注意を払わないくせに何かあったら責任だけは人に押しつけるという、なんとも身勝手で子供みたいな大人がたっくさんいる時代ですから、主催者側としても細心の注意を払って二重三重に安全対策をとらざるを得ないのでしょう。こうして、世の中はどんどん窮屈で住みにくくなっていくのですね。

Dscf0021

 危害を加えるかもしれないとはいえ、鹿は春日大社のお使いであるとされていますので、粗末に扱うことはできません。イヴェントとして入場料を取って観光客に見せているとはいえ、角を切り落とすのは神官の仕事です。奈良の鹿愛護会のスタッフがおもしろおかしく案内(実況)放送をするなか、勢子さん達が鹿を追い詰めて捉えます。捉えた鹿はゴザの上に寝かせてまずは水を飲ませ、しかる後に神官がのこぎりで角を切り落とします。

Dscf0032

 3~4頭の鹿が場内に放たれてしばらくすると、勢子さん達が入場してきます。手に持っている赤い旗を振って鹿を狭い通路の方へ走らせ、そこに投げ縄を放って角にかけてつかまえるのです。こう書くと簡単なようですが、敏捷で力の強い鹿ほど捕まらず、頭数が減っていくことで危機感を募らせて興奮することもあって、あとに行くほど難儀な仕事になっていきます。

Dscf0043

 勢子さん達が壁に沿って並んでいます。鹿は追い込まれて勢子さん達と壁との間の狭い通路を走らされ、そんな鹿に向かって縄のついた十字型の「竹」を投げて角にひっかけようというわけですが、しかもバカではありませんので逆に走ったりルートを急に変えたりと抵抗するわけで、そう簡単には同化補足することができません。

Dscf0044

 勢子さんが手に持っているもの、これを角めがけて投げます。うまく引っかかって、しかも綱の端をしっかりと保持していれば場内は拍手喝采ですが、たいていはどちらかがうまくいかず、大きな落胆のため息が聞こえます。

Dscf0102

 見ている方は気楽ですけれど、勢子さん達は真剣勝負。ひとつ間違えれば角で突かれて大怪我です。特にこの、竹を投げるあたりでは鹿の走るルートが広がるので、鹿がどっちに動くか予想がつきません。今日は皆さん無事でしたが、以前見せてもらったときには太ももを突かれて途中退場、という勢子さんもいらっしゃいました。まるで闘牛です。

Dscf0107

 見事捕獲。このあと、綱を引いて鹿を絡め取ります。場内2カ所に立てられた柱に綱の端をくくりつけると、鹿が逃げようと走り回ることで柱に綱が巻き付いて自由が奪われる、というわけです。思うように鹿が回ってくれないときは、勢子さんが綱をたぐり寄せていきます。

Dscf0046

 しかも必死ですね。綱のかかり具合が浅いと、鹿が脱出に成功することもあります。そうなると一からやり直し。あとへ行くほど鹿も興奮しますし、勢子さん達も息が上がってきます。何より観客が退屈しますので、さっさと勝負をつける必要があります。

Dscf0048

 柱のすぐそばまで引き寄せられて身動きできなくなったら、数人がかりで鹿を押さえ込み、脚で蹴られないように注意しつつ鹿を横抱きにしてござを敷いたところへ運びます。このときには場内を二つに仕切って、残りの鹿がそばに来ないようにしてあります。

Dscf0124

 ゴザの上に寝かせて水を飲ませてから角を切りますが、暴れると危険ですので勢子さん達が添い寝するようにして押さえ込みます。角の切り屑は強精剤として珍重されるので、神官は切り屑を紙で受け、それを懐に入れて持ち帰る・・・・・なんてことは、最近はないようです。

Dscf0059

 2本とも切り終えると、神官は切った角を両手に持って高々と掲げ、場内は拍手の渦、というのも、最近行われるようになったものでしょう。エンターテイメント性を追究してきているのでしょうね。こういう努力が実って奈良への観光客が増えると良いと思います。

Dscf0066

 写真右のフレーム外で神官が角を掲げて拍手を受けているのですが、鹿を抑えている勢子さんにとってはここからが大仕事です。うまい具合に鹿を離して自分も飛び退かなければ、立ち上がって走り出す鹿に蹴られたりして危険です。若くて力のある人よりは、ある程度経験を積んだ人がこの役目をしているようでした。ちなみに、写真右上に写っている黒い容器は、鹿に水を飲ませるためのものです。

Dscf0068

 ようやく解放された鹿。自慢の角を切り取られて頭が軽くなってしまいました。ここで角きり場の扉が開けられて、鹿は隣の鹿苑へと出て行きます。この角きり場は春日大社の参道に面していますが、その裏が弱った鹿などを保護する鹿苑になっているのです。

Dscf0136

 例年、体育の日前後の休日(土曜、日曜、祝日)に行われる鹿の角きり。大仏殿や春日大社といった観光名所のすぐそばで行われるイヴェントですので、来年はぜひ、皆様お誘い合わせてお越しください。入場料が1000円というのは高いように思いますが、これは鹿の愛護会の活動にあてられますので、いってみれば奈良公園の風景を守るための協賛金、ということです。これからしばらく、秋の奈良を楽しむいい季節ですね。

« 抵抗は無意味か? | トップページ | 東大寺ミュージアム »

コメント

奈良公園の鹿は小さいですね〜ってエゾシカがデカイんですね(笑)
エゾシカと間違えて競走馬を撃ったホンマモンの馬鹿がいましたが賠償金はどれほどだったのでしょう。。。

 mercuryo さん

 奈良公園の中を道路が走っていますから、車で鹿をはねるなんてことも日常的に起こります。悪質でなければ賠償金を請求されることはありませんが、クルマが凹んでいても賠償してくれる相手もありません。あくまで鹿の愛護会であって保護者ではありませんのでね。

クルマが凹む程度で済むなら良いのですが,エゾシカだと死人がでます。笑えない本当の話。
まあここのところ話題になってるのはヒグマですが(爆)

こうした鹿角を手に入れて、万年筆に加工しようとする方が出るのですねっ!
違うか!(笑)

 mercuryo さん

 かの有名なベンツAクラスのエルクテスト、ですね。ぶつかってもいけませんし、避けてもとんでもないことになりかねない、と。まぁだからこそ北海道の人は運転が上手いんでしょうね。

 二右衛門半 さん

 長原のお父ちゃんが作ってましたね。結局、角ってのは中に血管のあとがあって「す」だらけなんでだめだったのかな。

おお~職人技ですね。
おとなしく奈良公園で鹿を愛でる選択肢も有った、
と今更。実は昨日愛車で盆地内を爆走しておりました。

大阪のオバチャン さん

いや、連休中の奈良公園は芋の子を洗うような状態で、とてもじゃないけどそんな優雅なことはできなかったでしょう。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/604476/65038633

この記事へのトラックバック一覧です: 鹿の角きり:

« 抵抗は無意味か? | トップページ | 東大寺ミュージアム »

2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31